観音様

観音様

ある日の朝、『すみません』と困った顔をされた方が神社に来られました。
大切に風呂敷に包んだ物をもって来られて伝えにくそうにそっと風呂敷を広げました。
見るとお顔の三分の一割れてしまった陶器で作られた観音様の置物が出てきました。
どうしたら良いのか割れてしまい復元も難しく、名のある方が作った観音様で玄関に飾ってあるので毎日出かける時は挨拶をし、
その家の方の何十年も見守られた観音様です。

大切にしていたのに不注意で落としてしまい割れてしまった。
悲しそうに涙を流されて『ご供養して欲しい』おっしゃられます。
翌日ご供養祭を神社でする事にしました。
当日、祝詞を上げ、観音様のご供養なので観音経を奏じました。
依頼者からはマスクをつたいポロポロと涙を流されています。
丁寧に丁寧に祭式を執り行っていると丁度、観音様のお顔に光が差し込みました。
それはそれは
神々しく、綺麗で、穏やかで、魂がやどっている瞬間を感じました。
今まで大事にされてきてご供養される。
感謝で涙が溢れ『辛い時も、楽しかった時も、ずっと見守ってもらっていてお別れが寂しいです』とおっしゃられます。初めて自分も祭式で涙が出た瞬間でした。

本当に神社は色々な方が来られます。
神官という職に携わり神様と人と繋げる大事な仕事
これからも大切に祭式をしていきたいと思いました。